第5章

鼓動が跳ねた。「何なの?」

エイドリアンは言葉では答えなかった。大股で二歩、私との距離を詰めると、両手で私の顔を包み込む。親指が頬を撫でる。その感触は優しいのに、どこか拒絶を許さない強引さがあった。彼の匂いがした。清潔な汗、高価なコロン、そしてその奥に潜む、もっと暗い何か。まるで、禁断の約束のような香り。

「俺のものを手に入れるためだ」彼の声は低く、荒々しかった。「他の誰かに奪われる前に」

止めるべきだった。突き放すべきだったのに。けれど、体は裏腹な反応を示していた。下腹の奥底に、熱いものが渦巻く。「エイドリアン、だめ……」

「もう始まっているさ」彼は私の顎をくいと持ち上げた。...

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