第52章 さようなら神秘の果実

狼の王は私をあまり遠くへは連れていかなかった。私が苦労して丘を登った時、一目で下にいる古川陽の姿が見えた。

古川陽の名前を大声で呼ぶことはしなかった。どうせ彼のところまで行くのだから、無駄に叫んで他の動物や人を引き寄せる必要はない。

十分後。

ようやく古川陽の前にたどり着いた時、彼が地面に伏して泣いているのを発見した。両手で地面を強く叩き、手が血で滲んでいた。

「俺が悪かった!千葉晃の言葉を信じなければ、お前は死ななかったのに!」

「安心しろ、兄弟。必ず水原琉衣を見つけてやる、必ず彼女をお前の代わりに守ってやるから!」

しばらく聞いていたが、泣きながら繰り返すのはこの数言だけだっ...

ログインして続きを読む