第53章 狂った千葉弘也

小山の上で、千葉弘也は顔を曇らせたまま、一言も発しなかった。

木川武はつま先立ちになり、目を見開いて前方を見つめていたが、何も見つけることができなかった。

彼は千葉弘也の側に歩み寄り、尋ねた。「あっちはもう終わったんじゃないか?こんなに長く狼の遠吠えが聞こえないんだから」

すぐに誰かが同調した。「そうだよ!もう一時間も狼の遠吠えが止んでるんだ。西村晴馬も古川陽もとっくに狼に食われちまったんだろうよ!」

千葉弘也は首を振った。「もう少し待て!」

木川武はどす黒い声で言った。「何を待つんだ。狼の遠吠えもないんだから、狼の群れはきっと去ったんだ。彼らが死んだかどうか、見に行けばいいじゃな...

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