第67章 神秘的な赤い果実

俺はなんとか立ち上がった。背中の擦り傷が痛み、思わず顔をしかめてしまう。

再び水原琉衣を抱き上げると、ふとクロがまだあの草原に残されたままであることを思い出した。

だが、今の俺に奴のことまで気にかけている余裕などあるはずもない。

「これ……」

水原琉衣のわずかに赤みがかった瞳に震撼の色が浮かぶ。俺も同じだった。

先ほど俺に絡みついてきた蔓が、今やすべてあの巨大な木へと戻り、その幹に固く巻き付いている。

そしてその大樹は、てっぺんが見えないほど高く、枝葉は鬱蒼と茂り、まるで天を覆い隠すかのように、この空間の天井全体を塞いでいた。

俺は警戒し、水原琉衣を背後にかばう。

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