第97章 分裂した心

その夜は、誰もがぐっすりと深く眠りについた。

翌朝起きると、長旅による疲労はすっかり消え去っていた。

簡単な食事を済ませた後、もしクルーズ船が通りかかった時にすぐに見つけてもらえるよう、古川陽が何人か連れて目立つ目印を置きに行った。俺はと言えば、何人かと一緒に桶で海水を汲みに行った。

「西村さん、海水に塩が含まれてるのは知ってますけど、こうやって水を沸かすだけで塩が作れるもんですか?」

木川武が坊主頭を掻きながら言った。

俺は彼をちらりと見て、言った。「これを蒸留って言うんだ!」

塩は必需品だ。

しかし、このところ俺たちの塩はとっくに尽きていた。

長期間塩分を摂らないと、人は力...

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