第5章
小林杏奈視点
翌朝、私たちは66号線に出た。
青木浩司のトラックは古かったが、エンジンは安定していた。助手席に座り、錆びついた工場や廃墟が流れていくのを眺めていると、私は初めて本当の自由を感じた。
「どんな気分だ?」と、青木浩司は片手でハンドルを握り、もう片方の手で私の手を優しく包みながら訊ねた。
「やっと息ができるようになったみたい」
私は正直にそう答えた。
道中、青木浩司は自身のことを色々と話してくれた。十六歳で学校を辞めて自活するため、ガソリンスタンドや工場、病院などで働いてきたこと。彼が苦労話をするたび、その瞳の奥に疲労の色がちらつくのが見えた。
私たちは小...
ログインして続きを読む

チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章


縮小

拡大