第8章

小林杏奈視点

病院のICUは、ツンと鼻を突く消毒液の匂いが充満し、様々な生命維持装置が単調なビープ音を鳴らし続けていた。

私と小林瑛太は、長い廊下を無言で歩いていた。先ほどの口論がもたらした緊張感が、まだ私たちの間に重くのしかかっている。

瑛太は、お父さんが芽衣さんを虐待していたと本気で思っていたの?でも、そんなはずが……あんなに愛し合っていたのに……

それに、あのお金――何に使われたかなんて、私が知るわけないじゃない。

ICUのドアを押し開けると、ベッドに横たわる小林芽衣さんの姿が見えた。

その瞬間、私は息が止まりそうになった。

三ヶ月ぶりに会った彼女は、枯れ...

ログインして続きを読む