第3章

絵里視点

それから数ヶ月、私はまるで傷ついた動物のようだった。痛みの隅で体を丸め、近づこうとする者すべてに牙をむいた。

祖母は高齢で病気がちで、私の面倒を見られる状態ではなかった。和也が唯一の保護者となったけれど、私は彼のどんな段取りにも協力しようとはしなかった。

口もきかず、食事もとらず、彼に触れられることさえ拒んだ。

「絵里、薬の時間だよ」和也が錠剤と白湯を手に、私の部屋へ入ってきた。

私は彼に背を向け、黙って布団に潜り込んだ。

「そんなことしてたら、体がもたないよ」彼は小さくため息をついた。「お願いだ、せめて何か食べてくれ」

やはり沈黙。部屋に響くのは、時計の秒針が時を刻む音だけだった。

和也はため息をつき、ナイトスタンドに薬を置いた。「俺のこと、憎んでるんだろうな。あの夜、ご両親を病院から帰さなければ……君と一緒にいるよう、俺が強く引き留めていれば……」

私は勢いよく振り返った。目には怒りの涙が溢れていた。「そうよ! あんたなんか大嫌い! みんな大嫌い! なんで私を助けたの? なんでパパとママと一緒に天国へ行かせてくれなかったの!」

和也の顔から、一瞬にして血の気が失せた。その激情を押し殺すように、彼は深く息を吐き、ただ静かに、しかし魂を込めて言った。「だって、ご両親は君に生きてほしかったんだ、絵里。君が健やかに育つことが、あの方たちの何よりも切なる願いだったんだよ」

私はまた背を向け、枕に顔をうずめて彼を無視した。

『いっそ死んでしまいたい』

『そうすれば、もう何も痛くないのに』

そんな状態が、丸三ヶ月続いた。

すべてが変わった、あの嵐の夜まで。

――

午前二時、私は突然高熱を出した。朦朧とする意識の中、まるで燃え盛る炉に放り込まれたかのように、全身が焼けるように熱かった。

「絵里? 絵里!」和也の声が耳に響いた。「ヤバい、すごい熱だ!」

彼は私を抱きかかえると、ガレージへと急いだ。外では雷鳴が轟き、稲妻が走り、雨がフロントガラスを激しく叩きつけていた。彼は震える声で話しながら車を走らせた。「しっかりしろ、絵里。お願いだから、俺を置いていかないでくれ……君まで失うわけにはいかないんだ……」

『声が、震えてる?』

『怖がってるの?』

霞む意識の中でも、彼の声に含まれた恐怖と絶望が聞こえた――あまりにも生々しく、強烈に。

『彼……私のこと、本当に……心配してくれてる?』

病院で、和也は片時も私のそばを離れなかった。熱が引き、私が目を覚ますと、彼はベッドに突っ伏して眠っていた。目は赤く充血し、疲れきった様子で、片手はまるで私が不意に消えてしまうのを恐れるかのように、固く私の手を握りしめていた。

彼の顔には、はっきりと涙の跡が残っていた。いつも冷静で優しいこの人は、まるで子供のように無防備に見えた。

その瞬間、ハンマーで殴られたような衝撃が、私の胸を貫いた。

『もしかして……彼は本当に私のことを想ってくれてるのかもしれない』

『私、一人じゃないのかもしれない』

「和也?」私はそっと呼びかけた。

彼はびくりと目を覚まし、その目に安堵の色が浮かんだ。「絵里! 目が覚めたのか! 気分はどうだ? どこか痛むところは?」

彼のやつれた顔を見て、不意に鼻の奥がツンとした。「ごめんなさい」

「え?」

「あんなひどい態度とって、ごめんなさい」私は声を詰まらせた。「パパとママも……私があなたにあんなことするの、望んでないと思うから」

和也の目にたちまち涙が溢れた。彼は優しく私の髪を撫でながら言った。「君は何も悪くない。謝るべきなのは俺の方だ……ご両親を守ってあげられなかった……」

「ううん」私は首を横に振った。声には、さっきまでなかった強さが宿っていた。「和也さんのせいじゃない。誰のせいでもないよ」

――

その日から、私は心を開き始め、和也は保護者としての彼のすべての優しさを私に示してくれた。

彼は毎朝、朝食を作ってくれたけれど、その料理の腕はひどいもので、いつもベーコンを焦がしていた。

「絵里、朝食できたぞ!」と彼が呼ぶ。

キッチンへ行くと、煙を上げるフライパンにてんてこ舞いになっている彼の姿があった。

「これは.......出前にしない?」私は思わず笑ってしまった。

「おい! 俺の料理の腕だって上がってるんだからな?」彼は大真面目な顔でそう言ったが、私の笑顔を見ると、彼もつられて笑った。

それが、パパとママが亡くなってから、私が初めて心から笑った瞬間だった。

彼は宿題を手伝ってくれ、医学書を見せてくれ、手術の見学に病院へ連れて行ってくれた。私が悪夢にうなされて泣いていると、私が眠りにつくまでベッドのそばで物語を話してくれた。

「和也さん、どうして心臓は動くの?」私は興味津々で尋ねた。

「それはね、絵里。君の命の源を、体の隅々まで届けるためなんだ」和也は、手のひらでそっと胸をさするような仕草で、穏やかに教えてくれた。「まるで、大切な贈り物を、一つ一つ丁寧に届ける郵便屋さんのように、心臓は休むことなく、君の生を紡ぎ続けているんだ」

「じゃあ、和也さんが私の心臓を直してくれたの?」

「そうだね。でもこの心臓は、いつだって絵里、君自身のものだよ」

私は不思議そうに首を傾げた。「じゃあ、和也さんは私の心臓のエンジンだね!」

和也は笑った。「はは、君がそう思うなら、それでいいさ」

でも、その時の私は知らなかった。私の心はもう、とっくにあなたのものだったなんて、和也。

――

転機が訪れたのは、私が十七歳になったクリスマスだった。

五条邸はおとぎ話のように飾られていた。きらめくイルミネーションと銀色のオーナメントがそこかしこに飾られ、暖炉はパチパチと暖かく燃え、部屋はシナモンとリンゴの香りで満たされていた。

私は和也が買ってくれた深紅のベルベットのドレスを着て、彼と暖炉のそばでプレゼントを開けていた。外では雪が降っていたけれど、部屋の中は春のように暖かかった。

「これは何?」私は上品なベルベットの箱を手に取り、不思議そうに振ってみた。

「開けてごらん」和也はミステリアスに微笑んだ。

中には、小さなハート型のダイヤモンドのペンダントがついた、極上のプラチナのネックレスが入っていた。光を受けて、きらきらと見事に輝いている。

「すっごくきれい!」私は声を弾ませ、そっとネックレスを持ち上げた。

「これはご両親からの、成人祝いのプレゼントだよ」和也は目に懐かしさを浮かべながら、優しく言った。「君が十八歳になる誕生日に渡してくれって頼まれていたんだ。でも、君はもう立派な大人だと思うから」

私は立ち上がって鏡の前へ行き、それをつけようとしたけれど、留め金がとても繊細で、自分ではうまくできなかった。

「和也、手伝ってくれる?」

「もちろん。向こうを向いて」

私は彼に背を向けた。彼の温かい吐息が近づいてくるのを感じる。彼の指が私の首筋に軽く触れ、ネックレスを留めようとした瞬間、今まで感じたことのない電流のようなものが、全身を駆け抜けた。

『何、この感じ……?』

心臓がにわかに速まり、頬が熱を帯びていく。

「できたよ」和也が一歩下がる。「さあ、うちのお姫様がどれだけ綺麗か見せてごらん」

私が振り返ると、空中で視線が交わった。暖炉の炎が彼の灰色の瞳の中で揺らめいていて、私はその中に吸い込まれそうになった。その瞬間、私の心の中で何かが目覚めた。

『和也はもう、ただの名付け親じゃない』

『私の目には、彼は一人の……男性として映っている』

『私の心を、こんなにもときめかせる人』

その瞬間、自分が完全に和也に恋をしているのだと悟った。

前のチャプター
次のチャプター