第9章

和也視点

現在、アフリカ

現実に戻り、俺はアフリカの夜空を見上げていた。ここに来て一週間。どんなに努力しても、絵里の俺に対する態度は氷のように冷たいままだった。

『もう、本当に手遅れなのかもしれない』

『もう、彼女は俺を愛していないのかもしれない』

翌朝、メインテントで緊急会議が開かれた。医療スタッフが全員集められ、常ならぬ緊張感が漂っていた。

「たった今、連絡が入った」キャンプディレクターの原田さんの表情は険しい。「東部の国境地帯でエボラ出血熱の新たなアウトブレイクが発生したそうだ。死者三名、感染が疑われる者は二十名以上。直ちに医療チームを派遣し、支援する必要がある」

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