第2章

温水始子の涙は、唐突で、そして大袈裟だった。

もっとも、二十年以上も使いこなしてきた手練れの技なのだから、当然といえば当然か。

彼女はソファの隅に身を縮こまらせ、肩を震わせる。その嗚咽がリビングに響き渡った。

寝室のドアの前に立つ私は、見慣れたその光景を、何の感情の揺らぎもなくただ眺めていた。

「宮子、本当に私を追い出すつもりなの? 私、どこに行けばいいのよ?」

彼女は涙に濡れた顔を上げ、声を詰まらせる。

「あなたしかいないのよ。たった一人の家族なのに!」

皆の視線が一斉に私に突き刺さる。まるで私が冷酷非道な悪魔であるかのように。

あまりにも馴染み深い感覚だった——物心ついた頃から、温水始子が泣けば、いつも私が悪者にされた。

温水始子は東野十川に向き直り、その袖口を掴んだ。

「十川、どうしよう! 宮子にちゃんと説明してくれるって、約束したじゃない!」

東野十川は彼女の手の甲を軽く叩いてなだめつつ、私へと厳しい視線を向ける。その眼差しには非難の色が滲んでいた。

まるで、どうして病人をこんな風に扱えるんだ、とでも言いたげな目だ。

「宮子、始子にそんな仕打ちするなんてどういうつもりだ? お前の姉さんなんだぞ!」

一人の友人——正確には、元友人と言うべきか——が、非難に満ちた口調で前に進み出た。

「心臓病を患ってる彼女を、よくもまあ追い出せるもんだな?」

野原寧音が私の隣に歩み寄り、小声で言った。

「もうやめなよ、宮子。始子さん、あんなに悲しそうに泣いてるじゃない。もともと心臓も良くないんだし。姉妹なんだから、何かあってもちゃんと話し合えばいいじゃない」

私は野原寧音を見つめた。

ふと、三年前、彼女が就職活動をしていた時のことを思い出す。私が徹夜で履歴書を添削し、何度も面接の練習に付き合い、自分の人脈まで使って推薦したのだ。

その彼女が今、温水始子の側に立っている。

かつてないほどの荒涼感が、胸の内にこみ上げてきた。

可笑しい、という以外に、かける言葉が見つからない。

「野原寧音、いくらあなたと仲が良くても、これは私の家の問題だから……」

私は平静を装い、説明しようと試みる。

「もういい、宮子」

東野十川が私の言葉を遮った。

「野原寧音だって、始子のために一言言いたかっただけだ。彼女は心臓が悪いんだ。お前のやり方はあまりにも残酷すぎる」

彼は私の前に立つと、声を潜めて続けた。

「俺と始子が親しくしてるから、わざと彼女を追い出そうとしてるのか? お前が腹を立ててるのは分かる。だが、そんなやり方は幼稚すぎる。俺たちの長年の付き合いは、お前の信頼に値しないのか?」

「そうね、私たちの長年の付き合いがあったから、あなたも私にそんなことが言えるのね」

皮肉が口をついて出た。

東野十川——かつては生涯を共にすると信じていた男を見つめていると、心に残っていた最後の温もりさえも消えていく。

彼は私の病状について一度も尋ねず、私の気持ちを気にかけることもなく、ただ温水始子が「追い出される」かどうかだけを心配している。

私はもう何も言わなかった。

何を言うことがあるだろう。六年の愛情も、彼の目にはこれほどまでに軽いものだったのだ。

私が黙り込んだのを見て、温水始子はすぐさまソファから立ち上がり、私の前まで来るとその手を取った。

「宮子、怒らないで。私、心臓が弱いの、知ってるでしょ……」

彼女の指が、驚くほど強い力で私の手首を掴む。爪が皮膚に食い込むかのようだ。その痛みに、私は思わず彼女の手を振り払った。

温水始子は後ろへよろめき、大袈裟に床へ尻餅をつくと、すぐさま胸を押さえて苦悶の表情を浮かべた。

「あ……心臓が……痛い……」

「宮子!」

東野十川が駆け寄り、温水始子の前に立ちはだかって私が近づくのを手で制した。

「彼女に触るな! 自分が何をしたか分かってるのか?」

私はその茶番劇を冷ややかに傍観する。心底、馬鹿馬鹿しいと思った。

昔からずっと、温水始子の「心臓発作」は、いつもこうして絶妙なタイミングで起こるのだ。

「病院に連れて行く!」

東野十川は温水始子を抱きかかえる。彼女は彼の肩にすがるように頭を預け、目からは涙が計算されたかのように滑り落ちた。

去り際、東野十川はこちらを振り返る。

「宮子、お前には本当に失望した。こんなに冷酷な人間だとは思わなかった」

「私たちも始子に付き添って病院に行くわ。パーティーはまた今度にしましょう」

野原寧音はそう言うと、私を一瞥もせず、東野十川の後を追って玄関へ向かった。

他の者たちも次々と立ち上がり、荷物をまとめて帰る準備を始める。

私のそばを通り過ぎる時、誰かが冷たく言い放った。

「ちっ! 誰がお前の家なんかにいたがるかよ、冷血人間が」

私はその場に立ち尽くし、彼らが一人、また一人と去っていくのを見ていた。誰も振り返らず、誰も私を助けようとはせず、私が先ほど自分が病気だと言ったことなど、誰一人として気に留めていなかった。

彼らの目には、まるで温水始子だけが人間であるかのように映っているらしい。

私が口にするどんな言葉も、底辺のさらに底に置かれ、いつか気分が良くなった日にでも思い出される程度なのだろう。

病気のことについて、それ以上説明はしなかった。

治療して、生き延びる。それが今、私が考えるべきことだ。

ドアが閉まり、室内はひどい有様だった。

リボンや風船、プレゼントの箱が床に散らばり、テーブルの上のケーキは半分に切られたまま。そこには「温水始子さん、お誕生日おめでとう」という文字がはっきりと見えた。

私はゆっくりとソファのそばへ歩いていき、腰を下ろす。視線は、床に落ちたプレゼントの箱に注がれた。

箱は衝撃で開いており、中には私が心を込めて選んだピアスのセットが見えた。

これが、私がこの世を去る前に、温水始子に贈る最後のプレゼントになるだろうと、かつては思っていた。

ふと、曖昧な記憶が脳裏に蘇る。七歳の誕生日の光景だ。家では誰も覚えていなかったが、祖母だけがこっそりと金木犀の飴玉の入った小袋を握らせてくれた。

「宮子、誕生日おめでとう。おばあちゃんからの金木犀の飴だよ」

それが私がもらった唯一のプレゼントだった。甘くて、金木犀の香りがした。

そして今、その祖母も亡くなって久しく、私は完全に一人きりになった。

携帯を取り出すと、東野十川からのメッセージが届いていた。

「さっきは少し言い過ぎた。気にしないでくれ。始子の機嫌が直ったら、またちゃんと話そう。俺たちにはまだ先があるんだから」

まだ先がある? 私は乾いた笑みを浮かべた。

医者には、もって五年だと言われている。

くだらない。まだ先があるだなんて、聞いているだけで反吐が出る。

携帯が再び震えた。病院からの検査通知で、半月後に行われるとのことだった。

私は病院にだけ返信し、検査日時を確定させると、東野十川は無視した。

翌日、不動産屋が家に来て、写真撮影と査定を始めた。中年の男は家を見回し、それから私を見て、ためらいがちに言った。

「温水さん、今は市場の動きがあまり良くないんですよ。お急ぎでなければもう少し待てば、数ヶ月後には価格が持ち直すかもしれません」

「待つ必要はありません」

私は静かに言った。

「妥当な価格であれば結構です。できるだけ早く手放したいんです」

不動産屋が帰った後も、私は荷造りを続けた。家の中にはすでに多くの段ボール箱が積まれ、壁には釘の跡がいくつか残っているだけだ。

リビングの中央に立ち、長年暮らしたこの場所を見渡すと、記憶が潮のように押し寄せてきた。

ここには、東野十川との笑い声があった。そして、私が一人で耐えた苦痛もあった。

それ以上に多いのは、温水始子が私の空間を絶えず侵食してきた記憶だ。

彼女の写真が次第に写真立てを占領し、彼女の持ち物が棚を埋め尽くし、彼女の声が私の存在を覆い隠していった。

「始子は心臓が悪いんだから、お前が譲ってやれ」

それが父の口癖だった。

「始子にはもっと栄養が必要なんだから、お前は彼女と張り合うな」

それが母の言い分だった。

祖母だけが、毎年誕生日にこっそり金木犀の飴を持ってきてくれ、ささやいた。

「宮子、おばあちゃんはあんたが一番可愛いよ」

私は寝室へ行き、祖母の写真を取り上げ、そっと埃を拭う。

「おばあちゃん、私、ここを離れるよ。家はもう売ることに決めたの。怒らないでね。このお金が必要なの……私の命を救えるかもしれないから。もし、もし治らなかったら、私が死んだ後で、殴りにきてくれていいから」

写真立てにそっと顔を寄せると、涙が知らず知らずのうちにこぼれ落ちた。

物心ついた時から、祖母の私への愛だけは変わらなかった。決して変わることがなかった。

家を売ったとしても、完治の可能性が低いことは分かっている。

だが、このまま諦めたくはなかった。少なくとも、自分のために足掻いてみたかった。

携帯がまた光った。東野十川からのメッセージだ。

「話さないか?」

私はメッセージを見つめたまま返信せず、ただ携帯を梱包済みの段ボール箱に入れた。

もはや、交わす必要のない言葉がある。

裏切られた感情や時間のように、もう取り戻すことはできないのだ。

今の私は、ただ前を向き、残された時間で、本当の自分として生きたい。

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