第33章

月野里奈は無理やり冷静さを保とうとし、前の座席の運転手をじっと見つめながら厳しい声で言った。「急いでブレーキを踏んで!」

運転手はもう泣き出しそうだった。「ブレーキが効かないみたいです!押しても反応がないんです!」

「じゃあなんでさっきこっち側に曲がったの?」月野里奈は歯を食いしばり、目からは火が出そうなほど怒りを滲ませた。

その運転手も恐怖で震え上がっていた。彼はおずおずと口を開いた。「月島さんが、景色を見たいとおっしゃったんです。ここに着いたら曲がって止まって、少し眺めてから行くって......」

ブレーキが効かなくなるなんて予想外で、彼は停車できないだけでなく、安全な道路に戻る...

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