第35章
「咲良を守ってくれた。感謝するよ」
上田景川は「早く来い、時間を無駄にするな」と言った。
月野里奈は唇を噛み締め、体を支えながら車から降りた。足は全く力が入らず、ほとんど即座に上田景川の背中に倒れ込んだ。
男の広く厚みのある肩と背中が彼女をしっかりと受け止め、片手を彼女の膝の裏に通して太ももを支え、しっかりと固定したことを確認するとすぐに立ち上がって前へ歩き始めた。
月野里奈は呆然と上田景川の背中に身を預けながら、何故だか、ずっと昔の上田景川のことを思い出していた。
桜の木の下の白い服を着た少年は、かつて月島里奈の最も美しい思い出であり、また彼女を深淵へと落とす始まりでもあった。
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チャプター
1. 第1章:お姫様が来た!
2. 第2章:青湾別荘からの電話
3. 第3章:咲良お姫様のメイド
4. 第4章:ママは咲良に怒らないで
5. 第5章:6年後の再会
6. 第6章:拙劣な模倣
7. 第7章:振り返るに耐えない過去

8. 第8章:ママの写真を見たい

9. 第9章:物語を語る

10. 第10章:存在してはならない疑い

11. 第11章:私は彼の婚約者

12. 第12章:私の母は私が守る

13. 第13章:偏見

14. 第14章:咲良の反抗

15. 第15章:話し合いましょう

16. 第16章:模倣の理由

17. 第17章:妻の好み

18. 第18章:咲良が熱を出した

19. 第19章:私はあなたに謝罪する

20. 第20章:青湾別荘に再び来ることを許さない

21. 第21章:上薬

22. 第22章:暖かい抱擁

23. 第23章:ママはこんな風に見える

24. 第24章:パパは料理ができるよね

25. 第25章:家の味

26. 第26章:狐は下賤である

27. 第27章:綺麗な子供は嘘をつく

28. 第28章: 彼女は悪い考えを持っている

29. 第29章:僕のお父さんはとっくに死んでしまった

30. 第30章 感情を育む

31. 第31章 行きたくない

32. 第32章 嫌な旅行

33. 第33章

34. 第34章

35. 第35章

36. 第36章

37. 第37章

38. 第38章

39. 第39章

40. 第40章

41. 第41章

42. 第42章


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