第36章

「お、おばさん……」

耳元に突然咲良の弱々しい声が響き、月野里奈は勢いよく顔を上げた。「咲良、目が覚めたの!」

咲良はまばたきをして、まだ青白い顔に微笑みを浮かべた。「うん、おばさんが泣いてる夢を見たの……」

「本当は咲良、すごく疲れてて、歩くこともできなかったんだけど、おばさんが泣いてるのを見て、泣かないでほしくて、それで目を開けたの……」

月野里奈の涙は抑えきれずにこぼれ落ちた。彼女は咲良の手を握りしめ、額を合わせるように身を屈めた。

「おばさん、あの時すごく怖かったよ……」

「大丈夫よ、もう大丈夫」月野里奈は顔を上げ、優しく咲良の小さな頭を撫でた。「全部終わったわ。もう何も...

ログインして続きを読む