第39章

「月野里奈」

電話の向こうから小林まきの低い声が聞こえてきた。「トレンド見たけど、どうして上田景川のところでメイドやってるんだ?」

月野里奈は唇を引き締めた。「咲良がここにいるの」

電話の向こうの男は一瞬言葉を失った。「咲良がなぜ……」

「彼女、上田景川にそっくりなの。今は隠せていても、いずれ上田景川に気づかれるわ」

月野里奈は少し悲しげに目を閉じた。本来なら別の身分で上田景川に近づくつもりだったが、咲良が先に上田景川の前に現れてしまった。咲良を一人にしておくわけにはいかなかった。

「……上田家は、そう易々と噛み砕ける相手じゃない。特に、あの上田景川はな。俺の手を借りるか?」

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