第3章
彩香視点
朝の光が食堂に溢れている。私は昨夜徹夜で作った座席表を手に、テーブルのそばに立っていた。色分けされ、整理されていて、完璧な出来だ。
「恵茉ちゃん、今日は翔太くんの隣に座って!」「健くんは、窓際はどうかな?」
私は椅子を指し示しながら言う。子供たちはためらい、互いに顔を見合わせている。恵茉が椅子に滑り込むと、翔太もそれに続いた。しかし、健は凍りついたように、いつもの壁際の席をじっと見つめ、シャツの裾を指でねじっている。
ドアが勢いよく開いた。隆司がコーヒーを片手に入ってきて、部屋を見渡す。彼の視線が、並べ替えられた座席に留まった。その顎のラインが硬くなる。
「何してるんだ?」
「ただ、ちょっと気分転換よ。子供たちが新しい友達を作れるかと思って」
彼はすでに健の方へ向かっていた。「健は壁際に座る。いつもだ」
彼は手早く、慣れた手つきで椅子を元の位置に戻し始める。健の隣にしゃがみ込むと、その声は柔らかくなった。「いつもの場所だよ」
健の肩から安堵したように力が抜けた。
「あの子たちがもっと打ち解けられるように、手伝おうとしただけよ」
隆司は立ち上がり、私の方を向いた。その灰青色の瞳は冷たい。「手伝おうとすることと、理解することは別のことだ。健には不安障害がある。部屋全体を見渡せること、背中が壁についていることが必要なんだ。あんたは今、あの子の不安を煽っただけだ」
「そんなこと、誰も教えてくれなかったわ」
「何かを変える前に、一言尋ねてくれれば分かったことだ」
私の指が、役立たずになった座席表を握り潰す。七対の瞳が私たちを見ていた。隆司はコーヒーを手に取ると、部屋から出て行った。
一日は長く感じられた。どんな仕事も、薄氷を踏むような思いだった。午後になる頃には、胸の中に重い緊張が居座っていた。
外では、子供たちが遊び場に散らばっている。私がブランコを手伝っていると、翔太が雲梯を登っているのに気づいた。高く、もっと高く。そして、彼は動きを止めた。
金属の棒を握る手は、指の関節が白くなるほど強く、てっぺんで凍りついた彼の顔は青ざめていた。
私はそばに歩み寄る。「翔太くん、上で大丈夫?」
彼の声は震えていた。「降りられない」
「大丈夫だよ! さあ、ジャンプして。私が受け止めてあげるから!」
翔太の顔から血の気が引いた。全身が震え始める。
「あの子に、何を、言っているの」
隆司の声が、遊び場の騒音を切り裂いた。彼は固い表情で、燃えるような瞳で、私たちの方へ大股で歩いてくる。雲梯に着くと、素早くそれをよじ登った。再び口を開いた時、彼の口調は完全に変わっていた。
「翔太。俺を見ろ。ここにいる。片手ずつだ、練習した通りに。俺がついてる」
一歩一歩、慎重に、隆司は翔太を導き降ろす。翔太の足が地面に着くと、彼は隆司の足に腕を回してしがみついた。
隆司は翔太の背中をさすってから立ち上がった。私に向き直った時、その表情は氷のようだった。
「翔太は先週、里親の家から戻ってきたばかりなんだ。里親の父親が『ジャンプしろ、受け止めてやるから』と言って、受け止めなかった。翔太は落ちて、腕を折った」
その言葉は、私の胸に突き刺さった。顔がカッと熱くなり、そして冷たくなった。
「知らなかったの」。私の声はか細く響いた。「二人きりの時に教えてくれてもよかったじゃない」
彼は乾いた笑いを漏らした。「二人きりの時に? あんたがまずあの子にトラウマを負わせて、その後で俺が、それがどれだけひどいことだったか説明しろと?」
「私はあの子を励まそうとしただけよ!」
「この子たちに必要なのは、あんたの励ましじゃない。彼らのトラウマを理解してくれる人間だ。ヒーロー気取りでいるせいで、無自覚に古い傷口をこじ開けるような人間じゃない」
彼は翔太の手を取って歩き去った。翔太が私を振り返る。その瞳には恐怖が宿っていた。私に対する、恐怖が。
私はその場に立ち尽くし、爪が手のひらに食い込んでいた。
彼の言うことは正しい。だからこそ、余計に辛かった。
夕方。キッチンの準備。私は何か役に立てることを証明しようと、パスタソース用のトマトを刻んでいた。コンロでは湯が沸いている。
ドアが開き、隆司が入ってきて冷蔵庫へ向かう。彼は鍋を見て足を止めた。
「トマトソースを作ってるのか?」
私は顔を上げない。「ええ。夕食はパスタよ。何か問題でも?」
彼が近づいてくる。「恵茉はトマトアレルギーだ」
私ははっと顔を上げた。「誰も教えてくれなかったわ。私がやる事なす事に文句をつける代わりに、誰かがちゃんと説明してくれていたらね」
彼は壁を指さした。「壁に書いてある。すぐそこに」
食品庫の隣に、大きな表が掛かっていた。「食事制限とアレルギーについて」。そこにははっきりとした文字で恵茉の名前があった。「トマト、重度のアレルギー反応あり」。
顔にカッと血が上る。「気づかなかったの」
彼はため息をついた。「ちゃんと見てさえいればな。こういう細かいことが重要なんだ」
彼はコンロに歩み寄り、火を消した。「夕食は俺がやる。あんたはテーブルの準備でもしてろ。それくらいなら安全だろう」
私の中で、何かがプツンと切れた。まな板に包丁を置いた。エプロンを外し、カウンターに放り投げた。
「ええ、そうね。全部あなたがやればいいわ。どうやら私には、何一つまともにできないみたいだから」
「そういう意味じゃ――」
「私がここに来てから、あなたはずっとそう言ってきたじゃない」
私は部屋を飛び出した。ドアがバタンと大きな音を立てて閉まる。
その後、二階の廊下で洗濯物を運んでいると、反対側の端から足音が響いてきた。隆司が工具箱を持って現れる。私たちはお互いに向かって歩いていく。廊下は狭まっていく。私たちは数センチの距離で立ち止まった。
「失礼」。私の声は氷のようだ。
「そっちが先にどうぞ」。彼の口調も私と同じだった。
五秒間の沈黙。どちらも動かない。自分の心臓の鼓動が聞こえる。彼の灰青色の瞳が、私の胸の中で燃えているのと同じ、頑なな強さで私を射抜いていた。
ついに、私はわざと彼の肩にぶつかりながら横に一歩ずれた。「大人げないわね」
彼は振り返り、片眉を上げる。「お前が言うな」
私たちは反対方向に歩き続け、廊下の両端に着くまで互いに睨み合った。
ああ、本当に彼が嫌い。
夕食時、園田先生が戻ってきた。彼女の温かい存在が部屋を満たし、子供たちに挨拶をする。だが、その洞察力のある瞳は、隆司と私の間を行き来していた。私たちはテーブルの両端に座っている。一度も視線を合わせなかった。
その夜の十時、ノックの音がした。園田先生が湯気の立つマグカップを二つ持って入ってくる。彼女は私のベッドに腰を下ろし、一つを渡してくれた。カモミールと蜂蜜の香りがするお茶だった。
「教えてちょうだい、彩香。隆司と何があったの?」
何も言いたくなかった。しかし、すべてが堰を切ったように溢れ出した。「彼は私のことが嫌いなの。私がやることは全部間違ってる。私を役立たずみたいに思わせる。ここにいる資格がないみたいに」
声がひび割れる。「私がプロじゃないのは分かってる。彼みたいに心理学の学位もないし、三年間の経験もない。でも、私は努力してる。それなのに、彼は私がどれだけ不十分かを見せつけてくるばかり」
園田先生が私の手を握りしめる。「まあ、あなた。隆司はあなたのこと、嫌いなんかじゃないわ」
「そうは見えないけど」
彼女は微笑んだ。「彼はあなたのことを怖がっているのよ」
私は彼女を凝視した。「怖い? 私を?」
「隆司がここでボランティアを始めてどれくらい経つか知ってる?」私は首を振る。「三年よ。週に五日、雨の日も晴れの日も。一日も休んだことはないわ」
彼女は一呼吸置いた。「彼が養子になったのは十歳の時。素敵なご夫婦だった。六年間、彼には家族がいたの。本当の家族が。人生で一番幸せな時間だったって、いつか話してくれたわ」
彼女の声が柔らかくなる。「そして彼が十六歳の時、養父母が交通事故で亡くなった。二人とも。ある晩には家族がいたのに、次の朝には、彼はまた孤児になっていたの」
私は息をのんだ。
「想像してみて、彩香。一度捨てられて、それから家を見つけて、自分に愛することを許して、そしてまたすべてを失うことを。そういう痛みは人を変えてしまうのよ」
「屋根の修理。遊び場の遊具も」
彼女は頷いた。「全部彼よ。自分のお金でね。子供たち一人一人に誕生日パーティーを開いてあげる。彼にとって、この子たちはボランティア活動の対象なんかじゃない。彼の家族なのよ」
「あなたが最初のボランティアじゃないの。去年、SNSで有名な人が来たわ。三日間。たくさんの写真を撮って、子供たちも彼女のことが大好きだった。でも、彼女は去って二度と戻ってこなかった。恵茉は一週間泣き続けたわ」
「私はそんな――」
「あなたが違うことは分かってる。でも、隆司には分からないの。彼にとって、あなたはすでに傷つきすぎたこの子たちを、また傷つけるかもしれない見知らぬ他人に過ぎない」。彼女は言葉を切った。「そして、もしかしたら彼は、あなたの中に自分自身を思い出させる何かを見ているのかもしれない。何かから逃げている人。帰る場所を見つけようとしている人をね」
「あなたたち二人は似ているわ。二人とも自分を守っている。あなたは役に立つことで、他人を喜ばせることで、自分が必要なものを決して求めないことで。彼は人を突き放すことで、厳しくすることで、二度と自分を傷つけられるほど誰かを近づけないことで」
彼女は立ち上がった。「彼にチャンスをあげて、彩香。彼のためじゃない。あなたのために。だって、あなたたち二人とも、人を受け入れることは悪いことじゃないって学ぶ必要があると思うから」
ドアのところで、彼女は立ち止まった。「それと、彩香? 彼はあなたのことが嫌いなんじゃない。ただ、人を気にかけることは更なる喪失にしか繋がらないという自分の考えが、正しいと証明されてしまうことを、ひどく恐れているだけなの」
彼女が去った後、私は天井を見つめながら横になっていた。隆司は二度、家族を失った。子供の頃に一度、そしてやっと愛することを学んだ十六歳の時に、また。それなのに私は、彼が私の座席表を批判したからといって、憤慨していた。
大和のことを思う。彼がいなければ何もできないと、彼がどう言ったか。隆司の批判は、それと同じ不安を呼び起こした。お前は十分じゃない。お前には何もできない。
でも、隆司は大和じゃない。
大和の批判は支配欲から来ていた。隆司の厳しさは、愛と恐怖から来ている。一方は私を小さく留めておきたかった。もう一方は、傷つきすぎた子供たちを守りたいだけなのだ。
私は起き上がって窓辺へ歩いた。緑川町の夜空には星が散らばっている。青海市にはこんな星はなかった。街の明かりが明るすぎて。星がどんな風に見えるか、忘れてしまっていた。
私は決心した。謝りに行こう。私が間違っていたからじゃない――まあ、いくつかにおいてはそうだったけれど――そうじゃなくて、今、理解したから。
