第100章 いつ彼女の苦心が分かるのか

伏見盛重の眼差しが、ふっと翳った。あの夜――自分の下で彼女が花開いた瞬間が脳裏をよぎり、喉仏が無意識に上下する。

「分かった。君の意思は尊重する」

その言葉を聞いた瞬間、涼宮寧音はようやく胸の奥の息を吐けた。

「じゃあ……それで決まりね」

「うん」

約束は交わされた。けれど空気は、どこか妙に張りつめたままだった。

涼宮寧音は画板を抱えたまま立ち上がる。

「私、先に上で寝る」

そう言い捨てると、怯えた小動物みたいにくるりと身を翻し、ぱたぱたと階段を駆け上がって逃げていく。

伏見盛重は、その背中を見送った。堪えきれない笑みが、目元に滲む。

……

翌日、涼宮寧音は伏見盛重の別...

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