第108章 他に選択肢はない

彼の背中が扉の向こうへ完全に消えるまで見届けてから、涼宮寧音はようやく視線を引き戻し、ベッドサイドに置かれた、まだ湯気の立つお粥へ目を落とした。

彼女の好きな海鮮粥。干し貝柱と小エビが入っている。

涼宮寧音は器を持ち上げ、スプーンでそっとかき混ぜた。

ふわり、と香りが立つ。

ひと匙すくって口へ運ぶ。

熱い。けれど、その熱が、長いあいだ冷え切っていた胃の奥をじんわりと温めた。

それでも――

彼と自分のあいだには、決して交わらない二つの世界が横たわっている。

……

涼宮寧音は病院で三日過ごした。

その三日間、伏見盛重は姿を見せなかった。

代わりに北島大輝が毎日食事を届け、外...

ログインして続きを読む