第109章 彼は恐れている

そのころ、P市の別のホテルでは――。

涼宮遥香はスマホを床に叩きつけた。バキン、と乾いた音。画面は一瞬で蜘蛛の巣みたいにひび割れ、四散する。

受話口の向こうに向かって、彼女は喉が裂けるほど叫んだ。

「涼宮寧音ひとり始末できないの? ほら見なさいよ、啓介兄さんは捕まるし、私はここで孤立無援! これで満足?」

あの屋敷での一件以来、遥香は伏見盛重の手の者にこのホテルへ閉じ込められていた。外部との連絡はほぼ遮断。逃げ道もない。

それなのに涼宮寧音は、堂々と皇室ホテルに泊まり、王女からの補償まで受け取って、さらに準備期間まで上乗せされた。

どうして?

どうして、あの女だけが。

「遥香...

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