第124章 制御不能な鼓動

伏見盛重も、この張り詰めた空気を察したのだろう。沈黙を破るように先に動き、ドアを押して車を降りた。

涼宮寧音は一瞬だけ迷ってから、契約書をそっとしまい込み、彼のあとに続く。

二人は並んで河畔を歩いた。

夜風が彼女の長い髪をさらい、彼のコートの裾を揺らす。

言葉にできない何かが、二人のあいだを静かに満たしていった。

伏見盛重は彼女の左側を歩き、川面から吹き上げる風をさりげなく遮る。

その小さな気遣いだけで、涼宮寧音の胸の奥がふっと温かくなる。

やがて、恋人たちの南京錠がびっしりと掛けられた橋に差しかかり、二人は足を止めた。

芸術橋。

P市でもっとも名高い恋の聖地。

涼宮寧音...

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