第141章 自制、さらに自制

伏見盛重の気配が、圧し潰すように迫ってきた。

彼の纏う澄んだ香りが強引に涼宮寧音の鼻腔へ入り込み、脳が一瞬、酸素を失ったみたいにくらりとする。

目の前には、息が触れそうな距離の整った横顔。薄い唇は艶めいていて、ほんの少し顎を上げれば――触れてしまいそうだった。

下がりたい。けれど背中は椅子の背もたれ。逃げ場がない。

「わ、私……」

口を開いても、言葉にならない。

伏見盛重は、怯えた彼女の様子を見つめたまま、瞳の奥の黒を濃くしていく。

そして、ほんの少しずつ――距離を詰めた。

呼吸が絡み合う。

涼宮寧音は緊張で目を閉じる。まつ毛が落ち着きなく震えた。

――キスされる。

そ...

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