第37章 刀、研ぐ必要がある

夕暮れのグローバル・タワー。退勤ラッシュの時間帯、ロビーは人の波でざわついていた。

江口辰木はオーダーメイドのスーツに身を包み、真っ赤なバラの花束を抱えて、入口でもっとも目立つ場所に寄りかかっている。

整った顔には、計算された憂いと深情――いや、「愛情深いふり」が貼りついていた。通りすがりの女性社員たちが、思わず何度も視線を投げる。

それでいい。

むしろ、それが狙いだ。

周囲に「一途な男」を見せつけておけば、涼宮寧音がどう反応しようと、世間の目には自分が正しい側に映る。――そういう算段。

エレベーターが開く。涼宮寧音が出てきた瞬間、彼女は一目でその「主役」を見つけた。

眉がわず...

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