第68章 彼が自ら選んだ人

彼の言葉は、頭から氷水を浴びせられたみたいだった。涼宮寧音の胸いっぱいの怒りが、すうっと一瞬で消える。

――そうだ。自分は、ただの孤児。

感傷に浸る間もなく、医師が病衣をめくり上げ、腰の後ろの肌を露わにした。

アルコール綿が皮膚をなぞる。ひやりとした感触に、身体がびくりと震えた。

涼宮寧音は、もう無駄な抵抗をしなかった。

涼宮家は何度も何度も、自分に手を上げてくる。――本気で、こっちを「扱いやすい相手」だと思っているのか。

懇願なんてしない。屈服もしない。

今は耐えるだけ。ここを出る方法さえ掴めば……涼宮家だけは、絶対に許さない。

次の瞬間、腰の奥――腸骨のあたりに、鋭い痛み...

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