第93章 『星辰』

彼女はデザインボードの前へ歩み寄った。そこにはまだ、「月白の錦」のドレスのデザイン画が貼られている。

それは、美術館に飾られていてもおかしくないほどの逸品だった。裾には月光の淡い輝きが流れ、見る者の胸を静かに締めつける。

全員の視線がその一枚に吸い寄せられ、さっき押し殺したはずの絶望が、また喉元までせり上がった。

涼宮寧音は手を伸ばすと、ためらいもなくそのデザイン画をベリッと剥がし、ぐしゃりと丸めてゴミ箱へ放り込んだ。

「今この瞬間から、『月白の錦』は存在しない」

その所作に、アトリエの空気が固まる。

「寧音?」桜庭千秋が、理解できないという顔で彼女を見た。

涼宮寧音は振り返っ...

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