第110章

「ねえ、キスが終わったならとっとと出てきなさいよ」

 栗山弥音の気だるげで冷たい声が響いた。先ほどホールで見せた温和で優雅な様子とはまるで別人だ。

 葉原遥子の顔が真っ赤に染まる。彼女は勢いよく高橋空を突き放し、その場を去ろうとしたが、栗山弥音に引き止められた。

 栗山弥音は目を細め、笑っているようで笑っていない表情で彼女を見つめる。

「私と高橋空の結婚は、実はアクシデントみたいなものなの。父が数日前に亡くなったんだけど、遺言で勝手に、私を高橋空と結婚させたいって書き残してて」

「私たちはもともと幼馴染だし、高橋のお爺様も当然このおめでたい話を支持してくださったわ。でも、実はお互い...

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