第118章

「氷川社長、まだ人は遠くへは行っていないはずです」

 黒服の男が小声で言った。彼は床板の周りを調べ、微かな血痕が残っているのを見つける。「この隠し通路は、見たところ一人しか入れないようですね」

「分かった。お前が下りて様子を見てこい」氷川晨は目を細め、冷たい声で命じた。「位置情報の発信を忘れるな」

「はっ、氷川社長」黒服の男は恭しく頷いた。

 黒服の男が隠し通路に下りようとした、その時。朝倉蓮が突如、苦しそうに地面から這い上がり、焦ったように叫んだ。

「ごほっ、ゴホゴホッ! お待ちください、氷川社長!」

 氷川晨は不快そうに眉をひそめ、冷たい視線を朝倉蓮に向ける。その氷のような眼...

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