第126章

「こんばんは、葉原さん、安藤さん」

グレーのスーツを纏った男が車から降りてきた。その声は落ち着いていて、力強い。

「私は佐々木允様にお仕えしております、柏木と申します」

彼は一瞬言葉を切り、葉原遥子に視線を向けると、すぐさま彼女の手で鳴りやまない携帯電話に目をやった。そして、ゆっくりと口を開く。

「お二方、佐々木様がお会いしたいとのことです。ここは話しにくい場所ですので、まずは車にお乗りいただけますか?」

葉原遥子は目を細めた。目の前の男に見覚えがないわけではない。以前、佐々木家のオークションで彼を見かけたことがある。それに、男の胸元には佐々木家の家紋が留められていることにも気づい...

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