第168章

「もしもし、葉原さんかい? 俺は『Lunar Howl』のボーカル兼リーダー、伏黒獅堂だ」

受話器の向こうから、伏黒獅堂の低く落ち着いた声が響く。彼は軽く鼻を鳴らすように笑うと、こう続けた。

「突然ですまないが、明日の夜、あんたたちのバンドは空いてるか?」

葉原遥子は一瞬きょとんとして、傍らにいた松本彩と安藤羽風に視線を走らせた。少しの逡巡の後、彼女は礼儀正しく応じる。

「こんばんは、伏黒さん。ええ、明日の夜でしたら空いているとは思いますが……何かありましたか?」

「明日はウチのギター、風早郁香の誕生日でな」

伏黒獅堂の声色が少しばかり和らぎ、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「ささやか...

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