第184章

一週間後、夕暮れ時。S市、氷川邸。

氷川お婆様は彫刻の施された木製の椅子に深々と腰を下ろし、手には金箔の押された招待状を摘んでいた。トントン、と指先で卓を軽く叩く音が響く。その口調は、反論を許さない絶対的なものだった。

「晨。来週の氷川家の晩餐会には、S市の名家のご令嬢方がこぞって集まるわ。この機会に、しっかりと選びなさい」

「祖母さん、前にも言ったはずだ。興味はない」

氷川晨は眉を顰め、氷のような冷たさを声に滲ませる。

「俺は葉原遥子とは離婚しないし、他の女を娶るつもりもない」

「なんて親不孝な子だい!」

氷川お婆様は彼の冷淡な態度に激昂し、バンッ! と机を叩きつけた。

「...

ログインして続きを読む