第204章

栗山弥音は一瞬、呆気にとられた。

彼女は落ちていたメモを拾い上げ、窓から差し込む微かな月明かりを頼りに、そこに記された歪で頼りない記号に目を凝らす。

眉間にしわが寄る。その記号は、東雲家が独自に作り出した暗号のようだった。ごく一部の人間しか知らないはずのそれらを、かつて東雲季耶から基礎だけ教わっていたことが、まさか今になって役立つとは思いもしなかった。

細密な幾何学模様と、規則的に錯綜した曲線。その中の一つは走る小人のように見え、他には三本の波線、螺旋状にねじれた線、そして円が描かれている。

栗山弥音は指先に力を込め、必死にその意味を解読しようとした。

『この件を追うな。逃げろ、日...

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