第213章

その言葉に、葉原遥子は振り返った。物陰から歩み出てきたのは、高橋空の長身だった。深く澄んだその瞳には、誰にも気づかれないほどの、しかし確かな気遣いが宿っている。

彼女は少しだけ呆気に取られ、すぐに問いかけた。

「用事があるとおっしゃっていませんでしたか? どうしてここに?」

高橋空は口元をわずかに綻ばせ、淡々とした口調で応じる。

「予定より早く片付いた」

彼は葉原遥子の手から白檀の小箱を受け取ると、その顔をじっと見つめ、低く優しい声を落とした。

「いじめられてはいないな?」

「こ、コホン!」

葉原遥子は気まずそうに咳払いをし、頬をほんのりと朱に染める。

「私は平気です」

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