第230章

 その言葉に、楓谷真也は片眉を器用に跳ね上げた。面白がるような視線を向けると、勿体ぶった口調で言う。

「この屋敷はね……表向きこそハイソな社交場だが、その実態は巨大な闇取引の巣窟さ」

「まあ、葉原さんならとっくにご存知だろうけど」

 彼は声を潜めた。

「二階から上の客室は、『特別な需要』をお持ちの方々のために用意されている。ここで同伴者もなく一人でいる女は、黙って『取引可能な商品』と見なされるんだ」

 葉原遥子は眉をひそめた。胃の腑がずしりと重くなり、吐き気がこみ上げる。

「眉間にそんな皺を寄せてると、ハエだって挟み殺せそうだよ?」

 楓谷真也は彼女の顔をじっと見つめ、人好きの...

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