第239章

「義姉さん、久しぶりだね」

翌朝、七時半。葉原遥子は撮影現場の控室にあるソファで目を閉じ、仮眠をとっていたが、あからさまな嘲笑を孕んだ声に意識を引き戻された。

目を開けると、衣装に身を包んだ若い男がドア枠に寄りかかっているのが見えた。手の中でコインを遊び半分に弾きながら、意地の悪い笑みを浮かべている。

「実物は写真よりずっと美人だ。兄貴が心変わりして、あんたに夢中になるのも無理はないな」

彼はコインを空中に放り投げ、また掌でパシリと受け止めた。

葉原遥子は目を細め、彼の胸元にある名札を一瞥した。『永井奏太』。この映画の特別出演枠だ。

永井奏太は氷川晨の遠縁の従弟で、両親と共に海外...

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