第248章

甲板の上で、葉原遥子は遠くに佇む氷川晨の姿を認めた。顔面は蒼白で、身体には痛々しいほど厚く包帯が巻かれている。

彼女は一瞬足を止めた。胸の奥に微かなさざ波が立ったが、それは愛おしさなどではない。憐憫に近い、冷ややかな感情だった。

「松本姉さん、私一人で行くわ。気分もだいぶ良くなったし」

彼女は松本彩を見やり、その頷き確認すると、ゆっくりと歩みを進めた。その視線は氷川晨に注がれ、声色は湖面のように静まり返っていた。

「次は、もうこんなことしないで」

氷川晨は目を閉じたまま、唇の端をわずかに釣り上げた。その口調には自嘲の色が滲む。

「俺の勝手だ。お前には関係ない」

「割に合わないわ...

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