第272章

赤はセピアの美貌を見つめ、ゆっくりとしゃがみ込んで視線を合わせた。「なんでわざと栗山弥音を逃がしたの?」

セピアは予想外だったのか、指先をわずかに止め、一瞬だけ瞳を揺らしたが、すぐにいつもの調子を取り戻す。

「あの娘はもう私には不要よ。行きたいなら行けばいい」長い沈黙の後、セピアは淡白に言った。

赤は鼻で笑う。「嘘つき。あんたの性格なら、役立たずだろうが裏切り者をみすみす逃がすわけがない」

「そんなに私のことが気になる?」セピアは口角を上げ、身を乗り出した。白く華奢な指が赤の頬を撫でる。その声は低く、情事の最中のような甘さを帯びていた。「もう、私のことは憎くないの?」

赤の心臓がト...

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