第277章

 葉原遥子の反撃は、無論、想定しておくべきだった。だが、彼女がこれほど迅速に、これほど容赦なく牙を剥くとは予想外だった。手駒の冴島雅紀は完全に使い物にならなくなり、S市における基盤も根こそぎ奪われるだろう。さらに悪いことに、組織内部の日和見主義者どもが裏切るのも、もはや時間の問題だ。

「車を出せ」

 彼は冷たく言い放った。

「港へ向かう」

 手下が一瞬、戸惑いの色を見せる。

「ですが、今は警察が至る所で検問を――」

「出せと言っているんだ」

 鬼龍院煉の声は低く、静かだったが、そこには明らかな殺気が孕んでいた。手下は瞬時に口を噤み、弾かれたように駆け出した。

 しかし、彼が倉...

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