第50章

「彼に付いて行くのかと思ったよ」

葉原遥子がタクシーに乗り込んだ瞬間、聞き覚えのある低く魅惑的な声が聞こえてきた。

「高橋空?!」

葉原遥子は驚いて目を見開き、助手席に座っている男性を見つめた。

高橋空はマスクを外し、暗い瞳で彼女を見つめながら笑った。「そう、俺だ。驚いた?」

葉原遥子は唇を噛んだ。高橋空に何が起きているのか聞きたかったが、それも不適切に思え、ただ「少し」と返した。

彼女は一瞬言葉を切り、続けた。「あの人と帰るのは窮屈すぎるわ。たまには自分の気持ちに正直になるのも気分がいいものね」

「ずっとそうやって自分の気持ちに正直でもいいんだぞ」

高橋空はルームミラー越し...

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