第62章

高橋空がバイクを海辺に停めると、葉原遥子はヘルメットを外して車体から降りた。

「気持ちいい」

「じゃあ、次は君が運転するかい?」と高橋空がからかった。

その言葉に、葉原遥子は首を横に振った。前世で交通事故に遭ったときの凄惨な場面が、今もまざまざと脳裏に焼き付いている。慣れない車種を軽々しく試す気には到底なれなかった。

高橋空はかすかに笑みを浮かべ、葉原遥子を見つめて、柔らかな声で言った。

「行こうか」

夜の帳が下り、潮風が優しく頬を撫でる。二人は前後になって海辺を歩いた。

波が静かに砂浜を打ち、さらさらと優しい音を立てる。月光が海面に降り注ぎ、きらきらと輝く様は、実に美...

ログインして続きを読む