第69章

翌朝、葉原遥子は玄関のチャイムの音で目を覚ました。

眠たい目をこすりながらドアを開けると、そこには宅配便の制服を着た男が立っていた。

「葉原さん、これは氷川さんが昨日あなたに送るようにと私に託された荷物です」男の口調は申し訳なさそうでいっぱいだった。「昨日ずっと連絡がつかなかったのですが、氷川さんは管理人室に預けることも許してくださらなくて。それで、今日のこの時間にお伺いするしかなかったんです」

「待って、あなたが言う氷川さんって、氷川晨のこと?」葉原遥子の眠気は半分以上吹き飛んだ。

男は頷いた。

「それなら、この荷物は受け取れないわ」葉原遥子は手を振って、きっぱりとした口調で言っ...

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