第10章 婚約

 

週末、慈善オークションは予定どおり開催された。

新谷若夜は池田暁月と宮本明珠を連れて会場へ足を踏み入れるなり、あちこちから視線を集める。

宮本家は全国でも指折りの名門だ。まして若夜は手入れの行き届いた美貌を保ち、暁月は俗世から浮いたような気配を纏っている。母娘が並んで歩けば、一幅の絵――。

背後に宮本明珠がついてさえいなければ、の話だ。

「宮本様、こちらへどうぞ」

係の者に案内され、席へ通される。

暁月は会場を一瞥した。豪奢な内装、クリスタルのシャンデリアがきらきらと光を散らしている。

隣に座った明珠は、体裁のいい笑みを貼りつけていた。だが胸の内は荒波のように落ち着かない。...

ログインして続きを読む