第100章 ためらい

アトリエの扉は閉ざされていて、中からは明かりひとつ漏れていなかった。

彼女はその前で、ただ待ち続けた。

渡り廊下を抜ける風にふくらはぎの感覚がじんじんと鈍くなっていく。上着のファスナーをいちばん上まで引き上げ、冷たい壁にもたれたまま、廊下の先だけをじっと見つめる。

40分が過ぎ、1時間が過ぎた。脚は痺れきって、棒みたいに強張っていた。

通りかかった学生が何人か彼女に気づき、ひそひそと何かを囁き合っていく。相馬彩芽はうつむいたまま、聞こえないふりをした。

やがて、廊下の突き当たりから足音が近づいてくる。

角を曲がって現れた池田暁月は、筒状のケースを片手にしていた。相変わらず白いシャ...

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