第111章 銀の針

自分がやらかしたと分かっていながら、彼女はあえて「体力がもう限界で……」という顔をして隊列の真ん中に潜り込んだ。先導の責任を引率の先生に丸投げし、皆が危険な峡谷へ迷い込むのを、ただ黙って見ていた。

池田暁月は負傷した引率教師の前にしゃがみこみ、懐中電灯で額の傷を照らした。

リュックから救急キットを取り出すと、ヨード消毒の綿で手早く洗浄し、滅菌パッドを貼る。無駄のない動き。三分もかからず処置を終える。

立ち上がり、全員に向けて言った。

「道、見つけた。私についてきて。日が暮れる前に出られる」

雨脚は少し弱まったものの、山道は濁流に削られて原形をとどめていない。

先頭を池田暁月が進み...

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