第112章 人命

池田花依はなおも池田暁月の手首を死に物狂いで掴んでいた。爪が肌に食い込み、赤い筋がいくつも浮かぶ。

洞の奥からは、ぽた……ぽた……と雨垂れが落ち、石に当たる乾いた音が絶えず響く。岩肌の裂け目を縫って陰気で湿った山風が吹き込み、足元に散らばった枯れ枝と落ち葉がくるくると小さく舞った。

見守る学生たちの多くはずぶ濡れで、ズボンの裾には山の黄土がべっとり付いている。連日の徒歩行軍に加え、突然の豪雨。心も体も張り詰めた状態だから、ほんの火種が簡単に燃え広がる。

花依の声は甲高く、早口で、ほとんど歯止めが利いていない。

「5分? あんたが5分って言ったら5分なの? 医者なの? 診断できる資格で...

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