第116章 鶏スープ

池田暁月は病床にもたれ、無意識に掛け布団の縫い目を指先でなぞっていた。視線の先には、風に揺れる窓外の梧桐の木。――なのに頭の中は、ヘリの機内で見えた、あのぼやけた輪郭で埋め尽くされている。

熱い掌。低い声。何度も何度も繰り返された、『俺がいる』という言葉。

その影と新井飛鳥の顔を、心の中で少しずつ重ね合わせていたところで、病室の扉がすっと押し開けられた。

連日の高熱で体力はごっそり削られ、背中をクッションに預けてもなお、鈍い痛みとだるさが残る。点滴の左腕は長時間まっすぐにしていたせいで、じんわり痺れていた。

さっき目を閉じて休んでいる間も、脳裏では山での転落、夜通しの捜索、救助――断...

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