第121章 ゴルフ

池田花依がティーグラウンドに上がったとき、口元にはまだ「勝って当然」とでも言いたげな笑みが残っていた。

わざと動きをゆっくりにして、クラブを手の中でくるり、くるりと二回転。

ヘッドの反射が陽光をきらり、きらりと弾いたところで、ようやく腰を折り、ボールをティーの上にきっちり据える。

指先で、白い球面をとん、と軽く押した。

フェアウェイの奥から朝風が吹き抜け、丹念に整えた髪先をさらりと揺らす。刈り込まれた芝の青い匂いに、遠くの人工池から漂う生臭さが混じった。

池田花依は深く息を吸い、胸の奥の緊張を押し沈める。

この一打は完璧でなければならない。勝つだけじゃ足りない。誰の記憶にも残る勝...

ログインして続きを読む