第129章 円磨村で宿泊する

新井飛鳥は箸で背後の土壁の家をちょいと示した。

「虫」

言い終えるより早く、手のひらほどの蛾がばさばさと羽音を立て、開け放たれた戸口から飛び込んでくる。一直線に灯油ランプのガラス罩へ――ぱんっ、と乾いた音。

熱にやられたのか、卓上へぼとりと落ちて羽を二度ほどばたつかせ、ふらふらと起き上がると、また懲りずにガラスへ体当たりを繰り返した。

池田暁月は部屋の隅を指さす。

「そこ、ヤモリがいる。ヤモリは益虫で、蚊を食べるの。あれがいるなら、今夜の蚊は何匹か減る」

一拍置いて、箸を椀に戻す。妙に真面目な顔で付け足した。

「でも先に、あの蛾を片づけないとね。蛾のほうが口より大きいから……友...

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