第132章 たくさん話した

山の夜は墨を流し込んだみたいに濃く、遠くで犬が二、三度吠えた。空っぽの谷に反響して、しばらくしてようやく消える。

彼は振り返り、焚き火の明かりの中にいる池田暁月を見た。彼の、彼女には大きすぎるシェルジャケットを肩まで引き寄せて羽織っている。袖は余って指先が数本のぞく程度で、暁月は俯いたままスマホに文字を打ち込んでいた。

風邪で鼻が詰まっているせいか、打つ合間にふっと口で息をする。唇がわずかに尖り、いつもの冷ややかな印象とは別人みたいだった。

彼は戻って隣に腰を下ろし、最後に残っていた乾いたタオルを差し出す。

「髪、拭け。まだ乾ききってない」

池田暁月は受け取ると、適当に二、三度こす...

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