第137章 廃駅

彼は、彼女が何を欲しているのか分かっていた。

円磨村での対峙のとき、彼女が口にした言葉を一字一句聞いている。あの娘の行方を、どれほど気にかけているのかも。

池田暁月は、俯いて自分の指先を見つめた。

さっきまでキーボードを叩き続けた痺れが、まだ微かに残っている。医術とハッキング――それが彼女の最大の切り札だ。だが、相手が指定してきた場所は、明らかに「そういう切り札」を封じるために練られている。

罠だと分かっていても、行かざるを得ない場。

暁月はノートパソコンを閉じ、ベッドサイドの引き出しから小さな救急ポーチを取り出して、コートのポケットへ押し込んだ。中身は銀針が数本、消毒用アルコール...

ログインして続きを読む