第138章 火の海

池田暁月は、火の海のど真ん中――冷えきった床に横たわっていた。

意識は、最後の最後に残った微かな灯みたいに頼りない。

周囲がどんどん熱くなり、視界が赤く染まっていくのだけは、ぼんやり分かる。木材が炎の中ではぜるパチパチという音。どこかの鉄骨が焼き切れて落ちたのか、腹の底まで響くような轟音。

けれど、動けない。

両手も両足もきつく縛られ、全身の筋肉が鉛を流し込まれたみたいに重かった。

薬の作用に、酸欠の痺れが重なる。目を見開いて、目の前を確かめることすらできない。

彼女に残されたのは、呼吸だけ。

吸うたびに浅く、短くなる。濃い煙が鼻と喉へ流れ込み、熱さで呼吸の道が一枚ずつ焼けて水...

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