第143章 ドレス

控室の扉がそっと押し開けられた。新谷若夜が、湯気の立つ蜂蜜湯を一杯手にして入ってくる。姿見の前に立つ池田暁月の背中を見つけた瞬間、足がふっと止まった。

鏡の中の少女は、すでにドレスに着替えていた。煙灰色のベアトップのロングドレス。裾は水が流れるみたいに足首まで落ち、ウエストは締めすぎず緩めすぎず、細くまっすぐな体の線を、凛とした玉蘭の花のように際立たせている。

長い髪はゆるくまとめられ、耳元に落ちた後れ毛が数本。白く長い首筋と、艶のある真珠のイヤリングが覗いた。

余計な宝飾は何ひとつない。けれど、その顔立ちと纏う気配そのものが、いちばん高価な飾りだった。

「うちの娘、今日はこんなに綺...

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