第163章 困った獣

「はい。ご指導、お願いします」

  永野崇鳴は豪快に笑った。朗らかな笑い声が廊下に響き、何度も反響して戻ってくる。

  彼は池田暁月の肩をぽん、と叩き、「よし」とだけ言うと、くるりと踵を返した。まだ呆けたままの若い医師たちに手を振って、

「解散、解散。俺の弟子を囲んで見物するな」

  若い医師たちは我に返り、次々に池田暁月へ会釈した。視線には、敬意と羨望が混じっている。

  永野崇鳴の門を叩いて断られた人間など、いくらでも見てきた。だが、永野崇鳴のほうから名刺を差し出す場面など、誰も見たことがない。

「今日の午後、医学館で合同の診立てがある。直接来て、見学しろ」

  それだけ言...

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